「なんで、住み替えようと思ったんですか?」
「今の部屋に8年住んでるんですけど、網戸もボロボロで、開けるときも引っかかって
上手く開かないし・・。
なんか気持ち的に心機一転新しいところに住み替えたいなぁって思って。」
「網戸の修理は、管理会社さんに言えば8年も住んでるんだから、
やってくれるんじゃないですか?」
「1年位前に電話して言ったんですよー。でも、一度業者さんが見に来てくれたけど、
そのあと結局そのまんまで・・」
「催促しなかったんですか?」
「なんか面倒くさくなっちゃって。」
これは、先月賃貸マンションの仲介をさせてもらったお客さんとの会話です。
管理って本当に大事だなって思った瞬間でした。もちろん、網戸だけが原因で引っ越す
ことにした訳ではないでしょう。
でも、他の業界なら8年も継続して取引をしてくれているお客様なんて大のお得意様ですよね?
ある意味、ファンになってくれていないとこんなに長年のお付き合いにはなりません。
結局、このお客さんは近所の新しい物件に決めて、心機一転新しいスタートを切ることになりました。
仲介の仕事としてはとても喜んでもらえたので、よい仕事ができました。
でも、今回の件は、賃貸管理という仕事をするものとして、お客さんの心の内を聞いてぞっとした
経験でした。網戸の補修、金額にして1万円もしないものが、退去の要因になるのです。
あなたは、今回のお客さんを特殊な事例だと思いますか?
テナントリテンションの重要性
プロパティマネジメント(賃貸経営管理)には、テナントリテンションという概念があります。
”テナントリテンションとは、「入居者保持」「解約の抑止」のこと
を言います。賃貸経営は、長く入居してもらったほうが安定的に
収入が見込めますし、空室リスクに悩まされる事もなくなります。
入居者を顧客として捉え、顧客満足のために、さまざまな対策を
考え、実行することで居住年数を長くすることになります。”
このお客さんが退去した部屋はどうなるかというと、
1.募集家賃が大幅に下がります。(5000円くらいのダウン)
2.原状回復費用+リフォーム費用が掛かります。(家賃の約6ヶ月分)
3.空室損が発生します。(空室期間は短くても3ヶ月)
4.入居促進費(広告料)が掛かります。(家賃の1ヶ月分)
家賃が40,000円としたら、40,000円×10ヶ月分=400,000円の経費です。
網戸の張替え/補修費1万円は、この40万円に原状回復費として当然含まれています。
しかも、新しい家賃は5000円ダウンするので、今後は年間60,000円のマイナスです。
この400,000円のうちのいくらかでも、この入居者さん(ファン)の為に、使っていたら?
果たして結果は同じだったのでしょうか?
とても考えさせられる取引でした。
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